バックパッカーの放浪野宿旅日記

明日でお遍路が終わる

オレはその日、八十七番長尾寺を五時ギリギリにうち終わった。

 

日中の暑さが和らいできていて、空が淡いオレンジ色ですごくさわやかな夕暮れだった。

 

「明日でお遍路が終わる」

 

オレはココロの中でつぶやいた。

 

なんだか嬉しさと、寂しさの入り混じった変な気分だった。

 

長尾寺の山門で休憩していたオレはフと思った。

 

あれ?つーことは今日は、この八十八お遍路最後の夜じゃねーか!

 

こりゃ前夜祭だな。 前祝いをせねば!

 

「今夜は許す。好きなものを好きなだけ食え!」 自分で自分に言ってやる。

 

よっしゃ!気合を入れて重い腰を上げる。

 

もうひと踏ん張り。

 

スーパーと野宿の出来そうな場所を探すことにした。

 

しばらく歩いてスーパー発見!

 

カゴを持ちながらニヤニヤしちまう。

 

さー何食うかなー?

 

欲望のままにカゴヘ入れていく。

 

ビールに寿司、フライドチキンに乾き物、デザートまで買ってしまう。

 

最後の晩餐に適した落ち着ける場所を探し歩く。

 

キョロキョロしながら、なるべく早足で!でも急ぎすぎず!

 

ビールがぬるくなっても、泡だらけになってもいけない。

 

この旅で身に付けた絶妙な歩行速度!

 

そんなこんなで見つけたのは、役場の裏のひらけた駐車場だった。

 

あまり車の駐車していない隅の方にどっかり座り地面に今日のディナーを広げてみる。

 

久々のごちそうと本物のビール。

 

今日は発泡酒じゃねーぜ!

 

そんな事を思いながら一つ深呼吸をした。

 

ケツに伝わる温かさ。

 

アスファルトは日中の太陽を、いまだ内包している様だった。

 

ケツの温かさと頬をなでる夜風の涼しさがなんとも言えず最高だった。

 

ビールを掲げ乾杯をする。

 

乾いた体にビールは素早く浸透していく。

 

二本目をあける頃にはだいぶ気持ちよくなっていた。

 

夏虫の声と役場の体育館から聞こえてくる、ママさんバレーの声がなんだか不思議な気分にさせる。

 

うれしさとさみしさ。

 

こう・・・、胸の奥の方をギューとされる様な…

 

この思いは何なんだろうか?

 

相反する二つの感情を同時に感じること。

 

まるで無いものねだりの様で…
まるで足るを知らない様で…

 

オレは考えていた。

 

役場から帰路につく、職員達が車へ乗り込んでいく。

 

ママさんバレーのおばちゃん達はまだまだ集まってきていた。

 

オレは…彼らとは違う…。

 

そんな言葉が口をつく。

 

この同じ空間に居るのになんだか違う所にいる様な…

 

彼らは日常を送っていて、オレにとってはここは非日常で…

 

オレは彼らにどー映ってる?

 

ひげずらで、ロン毛で真っ黒に焼けて、ビール飲みながら駐車場で飯を食ってて…

 

まーあやしかったり、ウザかったりするんだろーな。

 

オレは彼らをどー思っている?

 

なんだかみょーな優越感。

 

オレはオレのやりたいことやってる。

 

「できない」は言い訳でやるかやらないか。

 

オレはやってるぜ。夢をかなえてるぜ!

 

そんな優越感。

 

それと焦り。

 

オレ何やってるんだろ?

 

もう学生じゃないのに働きもせずフラフラして。

 

そっちの日常をオレは知ってるから、そこに属していないことが何か不安・・・

 

そんな感じだった。

 

でも、確かなこともあった。

 

それは経験だった。

 

この数カ月でオレは、確実に経験を重ねていってて、それは今までの日常の中では出会えなかったものたちだった。

 

そして、そこから学んだことは、オレの魂を激しく揺さぶった。

 

「オレ、成長してってるんだよなぁ…きっと。」

 

そーつぶやき地面にゴロっと横になった。

 

アスファルトがあったかくって、アルコールも程よくまわってて、なんかオレは酔っ払いだった。

 

「八十八霊場」 「お遍路」 「同行二人」

 

八十八は88で、オレみたいにゴロっと横になった。

 

∞ ∞。

 

「あぁ、そーか!」

 

オレは天を仰ぎながら声に出して言った。

 

「∞ ∞。 無限・・・なんだね。」

 

そう、始まりは終りで、それは永遠だった。

 

オレは経験し、そこから学んでいっていたが、それは今まで何も経験していない事、無知である事の裏返しだった。

 

一つのなぜ?どうして?は解決すると同時に又、新たななぜ?をどこからか運んできた。

 

すべては循環していてきっと生きることも同じで…

 

オレは肉体であり精神であり魂であり、・・・それらなんだ。

 

どれかではなく、それらなんだ。

 

肉体が、心臓が停止した時オレは存在しなくなるのか?

 

いいや、そんなことはない。

 

生きること、人生が経験とイコールならば、オレは成長し続ける存在じゃねーか!

 

永遠じゃねーか!

 

兄さんが教えてくれた星の話を思い出していた。

 

「あーくそったれー!!!」

 

オレは抑えきれない歓喜を込めてそう叫び、おもちゃ売り場のだだっ子の様に手足をばたつかせていた!

 

自分が信じてきた…

 

与えられるままに受け取ってきた価値観が音を立てて崩れていった。

 

いくつかの断片が一つの片鱗をオレにつかませた瞬間だった。

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